虫嫌いが虫を克服するために虫を食べる話
「こんなブログはなかった」
全然更新してないし、そう言ってブログごと破棄しようかと思ってたんですけど、駄目でした。
「次の代のサークル員にどういう活動してるか説明するために必要」というのがサークルの意見らしくて、「いや、俺すらも理解してないからな、このサークル」と思いながらも、権力の犬なので渋々記事を書きます。
誰か、俺を褒めて欲しい。
という訳でこれから虫を食べる記事を書いていきます。
みんな、shareしてね。
どういう訳だよ。
「うちのサークルは虫を食べる活動をしてる」と後輩に思われたらどうするんだ。
残念ながら事実だよ、馬鹿野郎。
とはいえ、「いえーい、虫食べるでー。俺ら変わってるやろー?」みたいなテンションではないことは理解して欲しい。
「ちょwwお前ら、きちがいすぎww」とか学部の友達にリプもらうような調子乗った大学生みたいなことしたい訳じゃない。
なんなんだあいつらは。
ハッシュタグつけ過ぎだろ。
つけなきゃ死ぬのか?
ふざけるのも大概にしろ。
「嫌だ。なんで俺らは虫を食べているんだ。ふざけるな、ミルフィーユとかティラミスが食べたい」という心境でやっていることは理解してほしい。
誰か俺にスイーツ的なものを差し入れしてくれ。セブンのやつ。
甘味を感じたい夏なんだ、わかれ。
今回の企画では、その辺の調子乗った大学生がやりそうな「虫食ってみました」っていう内容をいかに整合性の取れた理由でお送りできるかを念頭に置いてみました。
その結果の企画がこちら。
はい、ドン!
「虫嫌いの人間が、虫嫌いを克服するために、虫を食べることで、生態系の中で虫の上に位置できるようになって、虫が大丈夫になるのでは?」です。
ごちゃごちゃうるせぇな。
もっと簡潔に伝えろ。
だから俺には友達がいない。
伝えたいことが溢れすぎているんだ。
俺の気持ちをみんなもっと受け入れてほしい。
と、まあ、ごちゃごちゃ書いたおかげで、企画の趣旨は理解できたでしょうか。
要するに、虫が苦手な人間は、虫を怖がっている節がある。
ならば、虫をボコボコにどついて、調理して、食ってみることで、「あれ?ウチってば、虫よりも激つょじゃね?ウケる。マジ卍」と、ギャルっぽくなること間違いなし!
卍の使い方あってんのか?
一番好きな卍解です。
と、まあ、こんな感じの企画をサークル員に伝えると、全員当日に予定があると遠回しに伝えてきました。
あれ?
みんな、やる気ないの?
虫食べたくないの?
は?
じゃあ、この企画やめまーす。
各自、各々の夏休みに戻って、スイカとか割ってください。
解散。
八月末日。
網を携え、夕暮れの川辺を遡上していく若者たち。はしゃぎながら、箱の中に虫を詰めていく若者たち。
そう、我々である。
なんやかんや、メンバーは集まった。
「ピザとか食べるよ」とか適当なこと言ったら何人か釣れた。
俺が食いてえわ、そんなもん。
おおよそ、2時間ほど。近くの川辺をぐだぐた歩いた結果、虫かごには本日の夕食の材料が集まった。
死屍累々。
生態系がこの箱に詰まっている。
パンドラの箱って、こういうものだったんじゃないだろうか。
この地獄絵図に軽く全員が引いていた。
甘い考えで集まった弊害だ。
足取り重く、サークル員の自宅に集合し、虫が糞を出すおおよそ2時間程をスプラトゥーンやマリオベースボールなどで遊んで過ごす。
虫なんか食べずに一生この気の置けない仲間たちとゲームをしていたい。
誰もがそう思っていたが、時間は無情だ。
ベランダから虫の羽音が嫌というほど聞こえてきて、我々は夢から醒めた。
こんなことなら夢なんて見なければ良かったと、任天堂を逆恨みした。
ここから、【ピテクスのピピピで虫ゃ虫ゃ(むしゃむしゃ)昆虫クッキング!!】の時間です。ふざけた話ですね。
まずは虫が詰まったこの禁忌の箱を温水で満たす。
動き回る虫を全て溺死させます。
調理前に羽ばたかれたら、マジでキッチンが爆心地になります。
苦しいのかもがく姿に、若干の罪悪感と人間の本質的な嫌悪感が募ります。
サークル員がぽつりと、「こんな風にして死ぬのだけは嫌だな」と洩らしました。
同感だなと、彼の肩を優しく触れた。
そのあとは、虫を本格的に熱湯で茹でていきます。
グツグツと茹でられる姿に、生の儚さと鍋の中に虫がいるという違和感を感じました。
「ちょっと、来てくれ!ヤバイ!」
鍋の様子を見に行ったサークル員が大声をあげます。
うるせぇな、今、ガチマッチやってんだよ。
くだらねぇ用ならしばくぞ。
「出汁がすごい出ている」
出汁ってなんだよ。
出る訳ないだろ、虫だぞ。
そして、その出汁を飲むサークル員。
やめとけ。
蕎麦湯とかと勘違いするな。
「塩の味がします」
それは、あらかじめお湯に入れておいた塩の味だ。漁師のごはんみたいになってしまったな。
そして、タマムシを揚げた。
文脈が破綻しているが、もともとが破綻した行為なんだ。
こうなるのも当然だろう。
光沢が失われ、頭が飛び出た姿はビジュアル的には泥と同じくらい食べ物にカテゴライズしたくない様子。
一生残り続けろ。
Googleに刻み付けろ。
恐る恐る口に運ぶ。
宝石を口に入れているようでそこそこのインスタ映えだった。
タマムシはインスタ映えするぞ、みんな。
shareしてくれ。
このライフハックを。
「あれ?なんか食べたことある味」
「本当だ、なんだこれ」
「あ、これ、あれだ。煎餅とかおかきにに入ってる黒い豆のやつ」
「いや、まて。確かめる。…………マジだ!!!!タマムシ、豆の味だ!!!すげえ!!!!」
これです。
ひとしきり、自然の奇跡を味わった後、トンボとバッタのかき揚げを作った。
トンボのかき揚げは「ドラゴンフライ」というレシピ名でクックパッドに載せてやろうかと思ったけれど、ネットに慣れた主婦はライオンよりも怖い。
眠れる獅子をわざわざ起こす必要はない。
実食をする光景。
彼女達は、これから「虫を食べた女」になる。
控えめに言って最強だ。
最終兵器彼女だ。
セカイだって救える。
最後に、どデカイバッタをフライにしました。
「バタフライ」と名付けました。
しかし、素材の姿を知ってるせいか、いま一歩口に運ぶことができない。
アンコウの姿を知っていたら、そう簡単に肝を口に運べない。そういうことでしょう。
しかし、先ほど、【虫の出汁】を飲んだ男が、前に出てきました。
「俺、食いますよ」
きっと、開拓者(フロンティア)精神とはこんな奴に宿っているんだろう。
太古にもいたはずだ。
「え?アンコウ?きっしょ。なにこいつ。うわ、食お」みたいにアンコウや、その他のゲテモノに手を伸ばしてきた奴は。
半ばドン引きしていたが、彼の勇気に敬意を払い、その言葉に素直に従った。
「海老みたいっすよ」
でけぇバッタをむしゃむしゃやりながら、何を血迷ったことを抜かしてやがるんだ。
「もう一匹いってもいいっすか?」
もう一匹いきやがった。
と、まあ、こんな感じで、虫を克服する企画は終了したんですが、肝心の虫を克服できたのかはどうだったんでしょうか?
後日、感想を聞いてみたところ。
とのことです。
どういうことだよ。
結局のところ、バッタ=海老を証明するだけの結果になってしまった。
余談ですが、後日、サークル員のインスタストーリーにこんな画像が流れてきました。こちらからは以上です。