友人を拉致して沼で鯖の味噌煮を作らせた話
優しい味?
暖かい味?
それとも少し懐かしい味?
家庭料理はどの家庭にもありますし、その家庭ごとに味は異なります。
しかし、家庭料理が嫌いなんていう日本人はいないでしょう。いたらそれは多分アルマジロとかなんかそんなんです。
と、ここでひとつ疑問がありまして。
果たして家庭料理はどこで作っても家庭的な味がするのか?
僕は常々、料理というものは食べる相手、食べる場所、雰囲気、などの情報によって味を変えるのではないかと思っております。
好きな相手と食べるお茶漬けが、最高級A5ランクの牛ステーキを凌駕することもあるかもしれません。
少なくとも僕は、宮崎あおいと「昨日飲み過ぎたね」なんて言いながら鮭茶漬けを並んでサラサラなんてした日には全身にフォアグラなすりつけられようが、迷わずお茶漬けを選びます。
まあ、宮崎あおいは本当に最高なんで、あんまり参考にならないかもしれませんが、とにかく。
家庭とは間逆の場所で食べる家庭料理は本当に家庭的な味がするのでしょうか。
例えば、家庭裁判所前で家庭料理作ればさぞ深みある味わいになるでしょう。
そんな感じで、家庭とは間逆な場所で家庭料理、鯖味噌煮を作ってみようと思いました。
しかし、僕は料理がそんなに得意という訳ではなく、鯖味噌煮なんて作ったこともありませんから、適当に作れば、パエリヤかなんかを作ってしまう可能性があります。
パエリヤなんか作ってしまえば、「わしゃ、スペイン人か!!!!」とネット民達の手によって炎上すること必須。
そこで、和食料理屋でバイトしている友人に作ってもらうことにしました。
しかし、ただ鯖味噌煮作ってくれと言っても天邪鬼な友人が手伝ってくれるわけもなく。
仕方なく僕は友人を拉致することに決めました。
僕は前々から一度、人を拉致してみたいと考えていたので、この機会が絶好のチャンスでした。
ホームセンターで諸々の拉致用具を購入しました。
店員さんにやばい目で見られました。購入したものだけ見ると『連続幼女誘拐犯』です。そんなつもりはない。
友人を呼び出し、僕は先輩の車で友人の背後に迫ります。
「お、いたいた。アホみたいな顔でおるぞ」
「アホやなぁ。今から拉致されるのに。アホやなぁ」
「拉致されて鯖味噌煮作らされるのによくもあんなアホみたいな顔でおれるなぁ」
「「wwwwwwww」」
本当に最低だなと思いました。
「今や!!捕まえろ!!」
合図の元、麻袋を頭に被らせて、ガムテープでぐるぐる巻きにします。
抵抗するので膝蹴りを入れます。
「おら!!車に入れ!!こら!!」
後部座席にぶち込んで車を発車させます。
車内には「ドナドナ」が流れ続けます。マンウィズアミッションのかっこいい曲が流れ始めると、すぐに「ドナドナ」に変更し、「マンウィズなんか聴かせるか!!お前は一生ドナドナなんだよ!!!」と不安を煽ります。
彼は和食料理屋勤務なので、身なりには非常に気をつけています。爪が伸びていてはいけない。ピアス、金髪はいけない。
衛生上良くないとされる行為は一切してません。
そこで、嫌がらせとしてマニキュアを塗ってやることにしました。
「ほんまにやめて」
「料理長に怒られたらええねん」
揺れる車内で塗ったので、指先にもマニキュアが付きましたが、僕の指じゃないので、どうでもいいです。
「なあ、これ、どこに連れてかれんの?」
「教えん。不安になれ」
彼は以後、言葉を閉ざしてしまいました。
不安からか怒りからか。
僕は少し怖くなって「怒ってる?」と聞いてみましたが、返事がなかったので、「ドナドナ」を歌い続けました。
と、ごちゃごちゃしてるうちに、
沼につきました。
「オラ!!降りろ!!!」
「道幅狭いから気をつけろよコラ!!!!!」
「沈めたろか!!!!」
荒れ狂う怒号の中、彼は沼に降り立ちました。
「そろそろ何するか教えてよ」
「鯖味噌煮作ってくれ」
「は?どういうこと?」
「うるさい。鯖味噌煮作ればええねん」
「ほんまに帰りたい」
準備が終わったので、記念写真を撮ってみました。
シュールレアリズムみたいな光景が目の前に広がりました。
なんだか物騒です。
バイオハザードでこんな奴いたな。
鯖味噌煮を作るために拘束を外すのですが、口だけは塞ぎます。声上げられると面倒なので。
まずは鯖に切れ込みをいれるのですが、用意したナイフが切れ味が悪く全然切れませんでした。悲しい目をされたので、「ごめん」と言いました。
生姜と鯖を醤油と酒で煮込み、最後に味噌を入れると完成です。
びっくりするくらい簡単で、呆気なかったです。
めちゃくちゃいい写真が撮れたので「Twitterのヘッダーにしなよ」と言ったのですが、「俺にはバイクあるから」と言っていました。
「お前、バイク似合ってへんねん。バイク売って調理器具買えよ」と言うとムッとした顔をしました。
ごめん。
早速、実食。
「臭ない???」
鯖の主張が強すぎました。
みんなびっくりするくらい美味しそうな顔をしませんでした。
ちゃんとメディア用に顔を用意しろよ、正直者か。
しかし、友人だけはムシャムシャ食うてました。
ムシャムシャ
ムシャムシャムシャムシャ
ムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャ
ということで、結論を求めるために友人に「家庭的な味した?」と聞いてみました。
「俺の家、鯖の味噌煮そんなに出たことないわ」
なんでそんな良い笑顔なんだよ。
結論: まず、鯖の味噌煮が食卓に並ばなかった。
そのあとみんなで天下一品を食べました。おいしかったです。
おわり。